
Arkaneのアート
完璧に手入れされた口髭。その帽子からは、身に着けている者の上品さが感じられますし、履いている靴に注意すれば、彼の社会的地位が読み取れるはずです。まるでArkaneのゲームに登場するキャラクターの話みたいですが、これは実在の人物、Sebastien Mittonのことなんです。とてもスタイリッシュな彼は、Arkane Lyonでアートディレクターを務めています。Arkaneの強みであり、スタジオのDNAにおいて欠かせない要素であるアートとスタイルについてMittonが語ってくれました。
真のArkaneスタイル
「Arkaneのスタイルは、私たちが好きな“没入型シミュレーション”というジャンルから生まれました」とMitton。「Arkaneが作るのは独自の作品世界です。もちろんプロジェクトでは参考資料から着想を得ますが、私たちは全てをゼロから作り上げます。私たちがインスピレーションを得るのは、とにかくありとあらゆるメディアからです。絵画、写真、実在の場所、ファッション、本、アニメーション、VFX… まだまだあります。スタイルが生まれるのは制作の最初期段階です。ユニークな環境やキャラクターを作りたいという欲求からスタイルが生まれるのです。そして選んだスタイルが、ゲームの他のあらゆる要素を牽引していきます」
とはいえ、ただクールに見せたいというだけでクールに見せることはできません。Mittonによれば、アーティストは常にゲームのコンテクストを考慮しなければならないのです。アートディレクションは、作品世界の構成要素の一部であり、重要な役割を果たしています。特定のゲームにおけるアートディレクションは、アクションからサウンド、核となるシステムの開発まで、そのゲームのあらゆる要素の基礎となるのです。「アートは必ずゲームプレイを支えるものであり、その逆はありません」とMittonは語ります。
同時に、Mittonとそのチームにとって欠かせないことは、一貫したスタイルを持つアートを作り上げること、そして彼曰く“それを守り抜く”ことです。これこそが、Arkaneのゲームがいつまでも古くならない理由のひとつです。重要なのは、現在のテクノロジーに依存したリアリズム(新しい技術的進歩の後では古臭く見えてしまうものです)よりも、明確で一貫したビジョンを打ち出すことなのです。Mittonはこう続けます。「このアートスタイルは、私たちの作るゲーム環境が非常に濃密で、探索を重視していることから生まれたものでもあります。つまり、画面に表示されるものを(良い意味で)制御する必要があります。例えば、前景は細部まで描き、背景は様式化されたシルエットにすることで、画面の見やすさを保っています。プレイヤーには面白いビジュアル面での刺激を与えたいですが、刺激が強すぎて負担になるようなことはもちろん望んでいませんからね。これは多くの芸術運動におけるアプローチと同じものです」

新たな世界にアートを
Arkaneのデザイン哲学を最大限に活用するには、プロジェクトごとに適した参考資料を見つけることが重要です。ロンドンの霧に包まれた街路からは、ダンウォールのビジュアル面でのインスピレーションを得ることはできても、ブラックリーフ島の着想を得ることはできません。どのゲームもそれぞれ違います。だからこそ、どのゲームもビジュアルや雰囲気が違っていなければならないのです。
Mittonは言います。「どのプロジェクトも新たなチャレンジです。私たちは全く新しいテーマとモチーフに基づいた、新たな世界と場所を生み出すことでイノベーションを起こします。もちろん、これは『DEATHLOOP』にも当てはまります。本作の場所や雰囲気、そしてこのパラレルワールドに反映されている時代設定、全てにおいて言えることです。60年代は私たちにとって新たなテーマです。この“新たな世界を探索したい”という情熱が、毎回新しいものを生み出すことにつながるのです。これからも様々な時代や空間への旅が登場します。Arkaneゲームのファンの皆さん、ぜひご期待ください」
Arkaneの作る世界は、それぞれ独自の物語と歴史も持っています。個性のない世界は記憶に残りませんし、それはArkaneが届けたい世界とはかけ離れたものです。プレイヤーが迷い込み、探索や秘密を解き明かすことで何時間も過ごせるような世界、作る側の注いだ情熱が感じられる世界であるべきなのです。アートやデザイン、物語やシステムを通して、どんな作品世界やその住民もリアルで真実味のあるものに感じられなければならないのです。そのような没入感こそが、あらゆるArkaneゲームの本質だからです。そういった世界を作り上げる過程は、その世界全体を眺めることから始まります。

「私たちのアートディレクションは、エレガンスとコンテクスト化を混ぜ合わせることで生まれます」とMitton。「そうすることで、あらゆる小道具、環境、キャラクターがプレイヤーにとって興味深く魅力的なものになります。それを実現するためには、まず優れた参考資料を集める段階を終えてから、最初に世界の全体像を作り始めます。世界全体について考えていくのです。その世界の形や色。遠くからその世界を見たときに感じられる雰囲気。言うなれば“大局的な視点”で見てから、ゆっくりとズームインして、そこから全ての要素に磨きをかけていきます」
Mittonは続けます。「路上にまで達したら、住民の気持ちになって考え始めます。自分がここにいるとしたら、どんなことが考えられるでしょうか? 『Dishonored 2』では、カルナカは木に囲まれているため、主な資材は木材でした。『Dishonored 1』のダンウォールは金属に覆いつくされており、抑圧的な雰囲気を盛り上げていました。『DEATHLOOP』のブラックリーフ島はどうでしょうか? この厳寒の島に木は生えていません。これといった抑圧もありません… ただしコルト以外の人物にとってですが。そこで、参考にする時代が決まった後、私たちは冷戦時代の古びた金属製の建物やコンクリートと、60年代の軽薄なポップカルチャーをミックスしてみることに決めました。この視覚的な対比が、『DEATHLOOP』全体にわたる一風変わったスタイルや雰囲気を生み出すきっかけとなりました。『DEATHLOOP』は大規模なチームコラボレーションです。コンセプトアート、レベルデザイン、オーディオ、アニメーションなど、多くの部門が一丸となって、本作のスタイルや楽しさ、探索を一貫した興味深いものに保てるよう力を注いでいます」
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