
DOOM® Eternal
Nods to Mods インタビュー:「Deathless」
DOOM® Eternal
再リリース版『DOOM (1993)』のプレイヤーの皆さんにお知らせです。アドオンのラインナップに新たなMODが加わりました。今回ダウンロードしてプレイできるようになったのは、スピード感あふれる狂乱のWAD「Deathless」。
作者は「DoomWorld Cacoward Lifetime Achievement」の受賞者で、「SIGIL」のオリジナルサウンドトラックを担当した、天才的なMOD作者のJames Paddock氏です!
彼は28歳で、イングランドのサリー在住。今回の特別インタビューでは“スピードマッピング”や、懐かしの『DOOM』シリーズ、MIDI作曲などについてお話を伺いました。ぜひご覧ください!
SLAYERS CLUB(以下SC):『DOOM』のMOD/ステージ制作を始めてからどれくらいになりますか?
JAMES PADDOCK(以下JP):思い出せる限り昔から『DOOM』のエディターを使っています。初めて本格的にマップを作ったのは2005年ごろだったと思います。そのころ、『DOOM』のオンラインコミュニティが今でもすごく大きくて活発なことを改めて知ったんです。コミュニティ製のMODのことを知って興奮しました。とにかく片っ端からプレイして、たくさんのものから創作のインスピレーションを得ました。それ以来ずっとマップ制作、MOD制作、作曲にハマっています。長年にわたって様々なプロジェクトに参加してきました。過去の自分を超えるため、そして他の人のビジョンを実現するお手伝いをするために、いつも努力しています。
今までに私の名義で公開したマップは200ぐらいになると思います。それにこの前、今までに公開したMIDIの曲を数えたところ640曲もありました。何かを作っていないと、心が休まらないタイプなんだと思います。
SC:「Deathless」は3つのエピソードを置き換えるWADですね。何人のチームで制作しましたか?
JP:マップを作ったのは私1人です! もちろん、友人や『DOOM』仲間の皆さんにいろいろと励まされましたよ。友人のFuzzballが、エピソード2とエピソード4の空を新しく作ってくれました。その色使いのおかげで、どちらのエピソードもとりわけビジュアルがユニークだという評価をいただきました。Fuzz、ありがとう!
去年11月、DoomworldのRyathというユーザーが“NaNoWADMo”を始めました。これは新たに毎年開催されるようになったチャレンジで、1ヵ月以内に全く新しいWADを作って公開するというものです。それで私もチャレンジに参加することにしました。Discordサーバーに参加して、そこで他の人たちと計画を練り始めました。まずはマップの名前の候補を決め、そして11月に向けてリソースファイルを作り始めました。誰もがやる気満々でした。最終リリースの前には、いろいろな人からバグの報告や、アイデアや変更点の提案などをいただきました。これ以上ないほど皆さんからの協力をいただけた環境でしたよ。
SC:「Deathless」の完成までに費やした時間を教えてください。
JP:9日です! 間違いなく私の最短記録です。最初の7日間でマップを作り、残りの2日間はアイテムとモンスターを配置するだけでした。それから“リリース候補版”を4つ出力した後、完成版を12月1日にアップロードしました。
1ヵ月以内にMegawadを作るという点においても、制作時間の自己記録を達成するという点においても、間違いなく目標を成し遂げられたと思います!
SC:このMegawad制作には、どんなツールソフトを使いましたか?
JP:マップエディターで頂点をひとつでも置く前に、SLADEというリソースエディターで「Deathless」の制作を始めました。NaNoWADMoのマップ制作期間が正式に始まる前に、「Deathless」用のWADファイルを用意し、事前に自作したリソースだけを入れておきました。これには新しいタイトル画像や、新しいエピソードやスキル名用のメニューグラフィックなどが入っていました。この時点でいくつか新しいBGMも選んだと思います。ほとんどは『DOOM (1993)』と『DOOM II』の曲でしたが、曲の順番を少し入れ替えました。
11月になった時点で、GZDoom Builderでマップを作り始めました。役に立つツールやショートカットキーがたくさんある、とても信頼できるエディターです。より新しいUDMF形式でのマップ制作用に特化しているので、シンプルな原作寄りのマップを作るのはとても快適ですよ!
今では私にとってGZDoom Builderは欠かせないツールですね。どんなマップ制作の作業にもこれを使っています。後継ソフトのUltimate Doom Builderにはまだ移行していないんですが、次から使うことになるかもしれません。
SC:どのようにステージをデザインしていますか?
JP:“スピードマッピング”です! Doomworldの様々な人が開催したスピードマッピングのセッションに数え切れないほど参加したので、かなり経験があります。このやり方を使うべきだと分かりました。とにかく“スピードマップ”は本当に速いんです。
ご存じの方もいるかもしれませんが、私は1回のマップ制作セッションにおいて、ひとつのエピソードに登場するマップ全てを並べて素早く作っていく方法を採っています。マップを描くときには、グリッド上に全マップを間隔をあけて並べ、順番に番号を振ります。これで素早く簡単にマップ間を移って作業できますし、ドア、出口の部屋、テレポーターなど、デザインを同じにしておきたい重要なものをコピペするのも便利になります。

テクスチャを貼らないマップなら、10分ぐらいで完成できます。テクスチャを貼るのはそんなにかかりません。30分~1時間ぐらいでしょうか? それから、アイテムの配置には数時間かかります。プレイテストには一切時間制限を設けません。できるだけ最高の形でマップをプレイできるようにすることが大切だと思っているからです。
SC:このMegawadでは主に何からインスピレーションを得ましたか?
JP:1人でMegawadを1ヵ月以内に作ろうと思ったきっかけは、ということでしょうか。それは、良いチャレンジになると思ったからです! もちろん、NaNoWADMoがぴったりのタイミングだったこともあります。「Deathless」のエピソード4、「Griefless」を完成させたのがちょうど数ヵ月前のことです。このエピソードは先ほどの“スピードマッピング”のテクニックを使って、ほぼ24時間で完成させました。
デザイン面では、ありきたりな答えかもしれませんが… 『Ultimate DOOM』から強い影響を受けています! 『Ultimate DOOM』のステージデザインには、驚くような魅力と独特な個性があります。特に超現実的なテクスチャ、不規則な地形、強烈な色使いなどです。これをできるだけ再現して、いかにも1993年か94年に公開されたステージだと思えそうなものを作ろうとしました。密度の高い戦闘を作ったり、規則的な地形を避けた点は、RomeroとMcGeeのマップにかなり影響されていると思います。
マップは原作の4つのエピソードのスタイルを思わせるように作りましたが、追加のテクスチャで少しだけ変化をつけて、ビジュアルがより魅力的になるようにしました。どのエピソードでも印象的なテーマカラーを決めて、それを空の色と、液体のダメージ床の色に反映しました。エピソード1は茶色の曇り空と泥水で、エピソード2は青い星空と青い水を多く使っています。エピソード3では、歪んだ不気味なドクロが浮かぶ奇妙なオレンジ色の空と、血と溶岩の池をたくさん使いました。エピソード4では山がそびえるユニークな緑色の空と、緑色の汚染物が大量に登場します。それぞれのエピソード用のカラーを決めたら、できるだけその色と合うようにマップを作成しました。

SC:どのようにMIDIを作曲していますか?
JP:私はビジュアルをすごく重視して創作を行います。これはマップ制作だけでなく作曲でもそうです。まず初めに、私は共感覚者ではありません。でも作った曲や、伝えたいメッセージには視覚的なイメージが伴うことがとても多いんです。まずは心の中でイメージを思い浮かべます。または“petrichor(ペトリコール)”、“thaumaturge(魔術師)”、“pearlescent(真珠光沢)”みたいな、響きが好きな言葉を思い浮かべることもあります。そして、そのイメージの雰囲気にぴったり来るような曲を書いていきます。
実生活からインスピレーションを得ることも多いです。ある朝の6時ぐらいのことですが、窓の外を見ると霧に包まれた牧草地が広がっていました。それですぐに作曲に取り掛かったのが「Mist at Dawn(夜明けの霧)」です。別の話ですが、ある涼しい夏の夜、バルコニーに佇んでいたことがありました。そして次の日に書き上げたのが、8分30秒もある「Night Air(夜気)」という大作です。作る音楽の雰囲気は、気分に左右されることもあります。でも、完全に満ち足りた気分でなければ、自分で満足いくような曲を書けないことがわかりました。作曲を始める前には“アクティブ”に、つまりワクワクするような気持ちにならないといけないんです。ストレスやパニック状態の中で作曲をしたこともありましたが、全然うまくいきませんでした。なので、悲観的な曲や“怒りに満ちた”曲は作らないようにしています。
このようにしてアイデアが浮かび始めます! 次に、曲の調と音階を決めます。MIDIエディターに楽譜を入力したり、MIDIキーボードで即興で弾いたりして、アイデアを形にしていきます。気に入ったメロディーができるまでは、あまり長くかかりません。そこから曲全体を作っていきます。作ったフレーズを“リフレイン”にして、2、3回繰り返して曲全体を作ることが多いです。どの曲でも、リフレインやソロ、イントロやアウトロが良いものになるように努力しています。全体的にあまり特別なことはしていないと思いますが、皆さんが私の考えに興味を持ってくだされば幸いです!

SC:あなたは最近、John Romeroがリリースした「SIGIL」の素晴らしいMIDI曲を担当したことで、高い評価を得ましたね。このコラボについて詳しくお聞かせください。
JP:あれは“現実とは思えない”としか言えない体験でしたよ。ある日の午後、RomeroからFacebookのメッセージで私の音楽についてお褒めの言葉をいただきました。それだけでも本当に驚きだったのですが、なんと「SIGIL」のMIDIサウンドトラック用に新しい曲が欲しいと言われたんです。もちろん、喜んでお手伝いさせていただきました!
Romeroは、私の『DOOM』プロジェクトで古かったり制作中止になったものの中から、既存の曲を使うことを望んでいました。 私はご希望であれば、すぐに新曲をいくつか作曲できることを伝えました。そしてRomeroの同意をいただき、タイトル画面用のテーマ曲と、ステージのインターミッション用の曲を新たに作ることになったんです。どちらも数時間ほどで完成させました。
それにしても、私がやってきたことは長年『DOOM』のコミュニティで活動してきて、それにMIDIも作ってきただけなのですが、そのおかげで『DOOM』の作者その人に知っていただけて、さらに史上最高のゲームの新たな5番目のエピソードを送り出すお手伝いをできたなんて嘘みたいですよね。このコラボに参加できて、今でもぞくぞくするほどうれしいです。

SC:「Deathless」制作における最大の課題または困難を教えてください。
JP:正直、あまり多くはありませんでしたが、何もアイデアが浮かばず、何日も悩んだことがありました。いずれは行き詰まるのだと分かっているので、そういうときは休憩するだけです。エディターでレイアウトをいくつか作るだけでも、創作のエネルギーをかなり消費すると分かっているので、毎日休まずに続けるのは無理です。結局、数日間は制作をしなかったと思います。その間は他のことに集中し、創作に向けて気力を取り戻しました。
最大の難関は、マップのアイデアを“即興で”考えることでした。特にエピソード2のマップがそうでした。エピソード1では紙にレイアウトを描いたのですが、エピソード2ではそうする予定がなかったので、大急ぎでほとんど即興でマップをレイアウトすることになりました。エピソード3では以前に作ったマップを流用してアレンジすることができたのですが、エピソード2ではそういうわけにもいきませんでした。

一番イライラするのは、頭の中にあるアイデアをうまく取り出して形にできないときです。アイデアが浮かばないことが原因なときもありますが、なんとなく気分が沈んでいるせいで予定していた一日の作業が台無しになってしまうときもあります。幸いなことに、「Deathless」ではそのようなことは起こりませんでした。むしろ、マップ制作に使える時間があり余るほどあったので、完全に集中して超ハイペースで作業することができました。
SC:『DOOM』コミュニティで好きなMOD制作者またはMOD制作チーム、そして彼(ら)が制作したお気に入りのMODを教えてください。
JP:長い間『DOOM』コミュニティで才能あふれる方々の作品を見てきました。なので、そういった方々全員の名前を挙げなければ失礼になってしまうでしょうね。
まずは、なんといってもDragonflyの作品が好きですね。彼とは素晴らしいコラボができましたし、彼のプロジェクトの完成度は信じられないほどです。それにとても気さくな人で、一緒に過ごしていてすごく楽しいです。
私は『DOOM』コミュニティに参加して以来ずっとXaserの作品のファンで、大いに刺激を受けてきました。彼とも素晴らしいコラボができました。Xaserは、『DOOM』のMOD制作なら思いつく限り全ての点で最高の実力の持ち主ですし、本当に親切で心づかいのある人です。
Erik Almの作るマップが以前から好きで、彼のスタイルからは間違いなく影響を受けています。
音楽で尊敬しているのは、stewboy、esselfortium、Alfonzo、Jazz Mickle、PRIMEVAL、そしてもちろんMark KlemとDavid Shawです。彼らの素晴らしい作品に出会わなければ、新たに音楽という分野に足を踏み入れて、今みたいに奥深い創作活動をしていることはなかったと思います。皆さん、ありがとうございます!

SC:あなたは最近、長年にわたる作品制作とコラボ活動により「DoomWorld Lifetime Achievement Award」を受賞されたことで、一躍有名になりましたね。おめでとうございます! 今はどんなものを制作中ですか?
JP:ありがとうございます! 賞をいただけて本当に光栄です。
今はすごく多くのプロジェクトに携わっていて、全部は数え切れないほどです。変わったMIDIのコミッションを手掛けていますし、これまた変わったコミュニティマッププロジェクトにも参加していますし、近いうちに公開したいと思っている個人的なものもたくさんあります。『DOOM II』で「Deathless」の続編を作れたら素晴らしいですね。今度は27マップを使った3エピソードの代わりに、丸々32マップを使って5、6エピソードのものを作れるかやってみたいです。いつかは完成させるつもりですよ!
今のところは、スピードマッピングで作った『Heretic』ハブのエピソードの続編をいくつか作りたいです。タイトルは「Faithless」で、近いうちに公開か… 少なくとも予告できる予定です。今度は“スピードマップ”ではないので、進捗が遅くなっているんですよ… ハハハ。私は“スピードマップ”と“スピード作曲”じゃないと、何も完成させられないんです!
SC:その他に感謝を伝えたい人はいますか? この機会にぜひお願いします。
JP:なんだかんだで私がこの世界を踏み入れるきっかけを作ってくれた、Mark Klem、David Shaw、Jeremy Doyleに感謝を伝えたいです。今でもあなたたちは最高です!
Doom Radio speedmapping sessionsに携わってきたTarnsmanとAlfonzoに感謝します。ずっと前、私が初めて参加したセッションのひとつでした。そして、信じられないほど昔からAbyssal Speedmapping Sessionsを主催しているObsidianとTheMionicDonutに感謝します。
私の生活が不安定だった時期を通して、ずっと力強く支えてくれたDragonflyに絶大な感謝を申し上げます。
そして「SIGIL」の制作に誘ってくださり、また助けてくださった偉大なるJohn Romeroに心から感謝します。本当にこの上なく素晴らしいプロジェクトに参加できました。
他にも、まだまだたくさんの方に感謝を伝えたいです。『DOOM』のコミュニティは間違いなく全てが素晴らしいです。皆さんも『DOOM』を続けましょう!
創作過程について語ってくださったJames Paddock氏に改めて感謝申し上げます。追加コンテンツのコレクションからPaddock氏のMEGAWAD「Deathless」をチェックしましょう。引き続きSlayers Clubでも『DOOM』のコンテンツをチェックしてくださいね!